社会人になり、営業や購買に関係のある部署に就くと聴くようになるのが『相見積もり』というシステムです。略して「あいみつ」と言われることがあります。
しかし部署違い、あるいは新卒でやってきた人は「あいみつ取っておいて」や「相見積もりしておいて」と急に指示されて困惑することもあるかもしれませんね。
ここでは、そんな相見積もりとはどういうものなのか?その依頼時のルールをお伝えしていきましょう。
本記事が参考になれば幸いです。
相見積もりとは?
相見積もり(略称:あいみつ)とは、二社以上に同じサービス内容、製品の見積もりを取ることです。もう、それだけでほとんど回答となっているくらいやっていることは単純です。
例えば、どこかのメーカーの商品が欲しい、あるいはサービスなどを受けたい時に相見積もりをお願いすることがあります。
このように、何社にも見積依頼を出すのが相見積もりです。
ちなみに上記の『商社A』と『商社B』は直接取引のあるメーカー・サービス会社ですが、『商社C』には直接取引がないので『商社D』にまた見積依頼をして、何とかチャンスを逃さないようにしている構図です。
こういった何社も通すことで二次店・三次店などが生まれていくのです。
就職活動するにあたり、業種って世の中色々あることに気が付きますよね。さて、『商社』ってなんでしょうか?あまり普段の生活になじみのない人や社会に出ていない人にとってはピンとこない人がいるかと思います。ここではそんな商社というも[…]
実は『相見積もり』という名前を使わないだけで、会社でなくても個人消費者でも無意識にこれをすることがあります。
例えば、エアコンの工事をおこなったり、保険をどこの会社にするのか決めたり、大きな買物では家を買う為に不動産屋めぐりをしますよね。
図にするとこんな感じでしょうか?意識していないだけで普段の生活でも相見積もりと同様のことを皆しているんです。
ではなぜこのような相見積もりをするのでしょうか?その利点を見ていきましょう。
【安く買える】
どうせなら安く購入したい。可能な限り安く買って高く売りたいというのが商売の基本です。
商社などの仲介業者は通常約10%程度の利益を乗せますが、メーカー・サービス側との関係によって安く済ませられたり、乗せる利益が他社より少ない場合があります。
その場合、同じメーカーの商品・サービス等を安い価格で受けられるのが通常は一番の理由となります。
【受けられるサービス・営業を選定できる】
仕事というのは価格だけではありませんよね。『人』に対しての好き嫌いもあるでしょう。はたして多少安い程度でやる気のない対応の悪そうな営業を選ぶでしょうか?
どうせなら親身になってくれる人、アフターフォローしてくれそうな人などを選びたいものですよね。
他、特に指定メーカーなどがない場合は仲介業者が選定して提案してくれますので、よりよいサービスを選ぶこともできるでしょう。
【複数の業者の提案やプレゼンテーションを受けられる】
例としては、商社・仲介業者をあげましたが、それに限らず会社に導入するシステムなども高額なので一社に決めず相見積もりしていくつか見て決めたいですよね。
相手側も販売したい為に多くの提案やサービスをしてきますし、プレゼンテーションなどを各社にしてもらい会社に合うもの。合わないものも出てくるでしょう。
最初から一社に決めると何も広がりがありませんが、相見積もりして競わせることで、自社にとってよりよいサービスを選定することができるようになります。
相見積もりのルール・マナー
さて、安く買える・よりよいサービスを受けられるなど得のあるシステムに見える相見積もりですが、本来ちゃんとしたルール・マナーがあります。
ほとんど暗黙の了解のようになってしまっていますがこれをしないで、ただ安く買いたいが為だけに複数の業者に依頼している人もいますが本来しかるべきルールを守らずにやる大迷惑な人が結構いらっしゃいます。
今後の関係性を守る為にも、ルールはちゃんと守っていただきたいものですね。
【相見積もりであることを別の依頼業者にも伝える】
今回出した案件が相見積もりであることは必ず依頼した相手全てに伝えましょう。
なぜなら、額が大きければ大きい程、相手はそれを案件として残して期待します。自社にだけ依頼がきたと思って準備を始めてしまう会社もあるかもしれません。
「今回は別の業者さんにも見積もり出しているんで」
くらいのことは今後の関係性も考えて伝えておいた方がいいでしょう。
【結果を伝える】
今回案件を決めなかった業者にも、結果は伝えましょう。決めた業者名を伝える必要性はありませんが、プレゼンテーションの評判がよかったからと半分確定案件として残していることもあるでしょう。
大抵の期待している案件であれば、相手から「あれ、どうなりました?」と電話があるでしょうが、取引上の良好な関係を保ちたいなら先んじて連絡をするべきかと思われます。
納期・予算・デザイン・仕様・提案内容・サービス……と、他社と比べて何か見劣り、あるいは合致するものがなかったからこそのお断りだと思いますが、それをちゃんと伝えてあげるのが相手の為にもなります。
【条件提示をしておく】
製品が決まっているなら製品名だけでいいですが、仕様・予算など相手の提案を受けるものに関してはちゃんと条件を明確にして提示しましょう。
企業にとってどんな案件でも見積もりは手間なものなのです。
最初から条件ありきなのに、それを提示しないで後出しで断ってくるのは失礼にあたりますので最初から決まっている条件に関しては見積もり段階で明示しておきましょう。
【あて見積もりにしない】
はっきりいって、会社の信頼を損なう最低の行為です。絶対にやめましょう。
あて見積とは、最初から注文するつもりがないのに調子よく「この値段より安くしたら買うよ」と安い見積もりを出させ、既存で納入されているか、最初からここと決めている業者に対してその見積もりを当て馬にして、値段をさらに下げさせる行為です。
どうせバレないと思っているでしょうが、世の中狭いものでそんな姑息な行為はなぜか絶対にバレます。
業者の立場だったら、そんな会社に今後も見積もりをしたいですか?また都合よく使われると思って二度としないですよね?
場合によっては、その話が業界中に流れて会社の信用は失墜します。
結果的に既存業者が取られたくないからと下げてきて、それを誠実に伝えるのなら問題ないですが、取引するつもりなく『あて見積もり』にするのは絶対やめましょう。
相見積もりは嫌われる
依頼者の方は少しでも安く買いたい、少しでもいいサービスを受けたいという思いから相見積もりをすることがありますよね。
会社としてルール付けがされており、二社購買という方法を取っていることもあります。
二社購買とは、調達する会社を二社に分けて納期の遅れや値段の安い方から注文するなどをすることでリスク分散や経費削減などをする方法です。
……と、見積もりを『依頼する側』の主観では安くなる・いいサービスを受けられる方を選べると、かなり都合のいい方法ですよね。
しかし、視点を逆にして想像してみてはいかがでしょうか?
- 自社以外にも依頼をしている(自分のところを贔屓していない)
- 別の業者と値段のたたき合いをさせられる
- 注文にならない可能性が高い
少なくてもこれくらいは考えられますよね。さらにこれが一つの商品だった場合、メーカー側は相見積もりをされた分だけ、見積依頼が集中して全てやってくるのです。
どうあっても一社しか注文にならないのに、わざわざすべてに見積もりの回答をしなければいけないんです。たまったものではありませんよね。
明らかに依頼者しか得をしないのがこの相見積もりというものです。
当然ながら嫌われる傾向があり、さらに一番安い見積もりを出してきたところにさらに値引要請をするような、自分さえよければいいという厚顔無恥な人も一定数存在します。
ちなみに、メーカー側はこれでさらに値引要請をされても通常は請けられません。なぜなら、一社下げるのなら全社下げないとフェアではないからです。
なので、場合によっては相見積もりの場合は最初から仲介業者すらも断る場合があります。
あて見積にされるかもしれないし、安い利益で必死になって取らなくてもいい、今後継続して取引しなくてもいいというような会社だったり、理由は様々ですが無駄な作業をさせるだけのような労力に比べてリターンが少なければ、断るというのも選択肢なので仕方ありませんね。
もし、値段の面で本当に安く購入したいのであれば一社決め打ちで交渉した方が実はかなり安くなることがあります。
だって、上記の仕組みでは一番利益率があるのはメーカーであり、相見積もりでは下げなかったそのメーカー側の値段が下がるのかもしれないのですから。
この図でいえば、商社は約10%の利益。メーカーは通常は原価から30~60%近くの利益を得ているものです。
どちらが下げる方が大幅に下げられるか明白ですね。
後は大口ロットだったり、最初から高いようなものであれば交渉しだいで安くすることもできるでしょう。それにはメーカー側を動かさなければならないので、ふらふら浮気をしているような相見積もりでは小銭は稼げても大幅な稼ぎは難しいということですね。
ちなみに、注意点が一つ。
安かろう、悪かろうという言葉があるように『サービス』に到っては安ければいいというものではありません。
建設工事など、『作業員の質』が悪かったり、打ち合わせをしていないところの『材質』が悪かったりということはよくある話です。
何も考えずにやると、思わぬ落とし穴にはまることもあるということですね。
まとめ
さて、相見積もりについてまとめさせていただきました。
ただ自分(自社)が儲けたいが為だけに相見積もりをする人は多いですが、ちゃんと相見積もりであることを通知してやっている人は少ないです。
これ「賢い」じゃなくて「ズルイ」に近い見積もり方法ですので、会社から言われたからと思考停止でやるのではなく、ちゃんと相手の心情を考えてからやって欲しいものですね。
本記事が何らかの参考になるのでしたら幸いです。