就職活動するにあたり、業種って世の中色々あることに気が付きますよね。
さて、『商社』ってなんでしょうか?あまり普段の生活になじみのない人や社会に出ていない人にとってはピンとこない人がいるかと思います。
ここではそんな商社というものについてまとめていこうと思います。
本記事が多少でもお役に立てれば幸いです。
商社とは?
商社というものは、物を仕入れてマージンをとって販売する商品の仲介業者です。
と単純にいわれても「なんだ、中抜き業者か」とか「えっ?わざわざ必要なくない?」とか「Amazonで十分だろ」という声があると思います。
なんだよ「転売ヤーかよ」とも思うかもしれませんが、これは一般的にいう『転売ヤー』のようなモラルがなく他人の迷惑になるような人たちと違って製造者側にも消費者側にもメリットのあることなんです。
その一方でデメリットもあることなので、この商社の仕組みをまずご説明しましょう。
かつて消費者が買物に行くときは、このようにそれぞれの専門の個人商店を回らなければなりませんでした。
一店舗ずつ回り、わざわざ違うものを買いに行かなければならないので手間ですよね。ですので、スーパーやデパートができ、一店舗に行くだけでなんでも買えることで利便性が増しました。
それと同じです。
商社に頼むと、商社が代わりにすべてを仕入れてくれて客の要望通りに納品してくれるのです。
まず、これが商社の基本的な仕組みです。
商社に頼む消費者・製造側メリット
では、この仕組みに対してのメリットをお伝えします。
「やっぱり転売ヤーじゃねえか」とここまでで思ったかもしれませんが、確かに大きくみればそうでしょう。
ですが、そこは個人とは違って法人です。ちょっと違ってきますので、まずは見ていただければと思います。
購入者側から見たメリット。そして製造や卸者側からのメリットがあります。
①一括で物を買える(購入者側)
わざわざあちこちから見積もりをとって、購入してまたあちこちに代金を払うという管理の手間が一社だけになります。
専属の担当者がいるのでしたら、その人とだけやりとりすればいいので手間という見えないコストを考えると非常に便利です。
②探してくれる(購入者側)
欲しいものが廃止になっていたり、すぐに手に入らないときに別メーカーなどを含めて代替品を探してくれます。
製造や卸業者にいくら困るといっても、廃止したものはどうしようもありませんしお人よしでなければ他社の類似品を教えてくれるはずがありません。なぜなら教えるとライバル会社の儲けになるからです。
そういったことから、商社はもしもの時に自社の取引先をあたって代替品を探してくれるのです。
③定価より安く買える(購入者側)
定価、つまりメーカー希望小売価格よりも基本的には安く購入することが可能です。一般的に商社のマージンは10%以上とはなっていますが定価を超えて販売されるということは少ないでしょう。
製造側も特に交渉がなければ定価の半額から7掛けくらいが相場ですので定価より安い値段。あるいは定価くらいで購入できるでしょう。
ちなみに、定価を超えている値段を提示された場合は間違っているか、その商品・製品に弱く商社をいくつも通した3次店・4次店の可能性があります。一社10%以上取ってたらそのうちそうなりますよね。
④知識がある(購入者側)
より多くの商材を扱う為に商社マンはある程度知識が必要です。とはいえ、浅く広くですが商品に対しての理解力がないと販売はできません。
メーカーを呼んで勉強会をわざわざしているところもあるので、専門でなくても詳しい人は意外と多いです。
⑤いちいちユーザーとやりとりをする必要がない(製造側)
製造側が各ユーザーと毎度やりとりをしていたら、その数が増えたときにパンクしてしまいかねません。
特に大して買ってもいないのに、毎日毎日しつこくかけてくる人や、いちいちすぐに見に来いと言ってくる人など面倒なユーザーは多々います。
ですので、製造側は作ること、販売すること。あとは問い合わせの対応に従事してユーザーの支払い・請求のやりとり、簡単な問い合わせなどを商社に任せてしまえば、互いに役割を分担化できますよね。
うまく商社と共生することで、商社は安く仕入れてマージンをとって販売。製造側は利益を出せて手間もある程度省けるということができるのです。
⑥自社で営業しなくても販売してきてくれる(製造側)
製造側は物を作るのが目的の業種ですが、せっかく作ったものを広報・営業しなければ売れないですよね。
当然ながら製造側も営業マンを雇うでしょうが、限界があります。そこで、商社を利用するのです。
商社は全社に各拠点がある大きいところから地元密着の商社まで多様にあります。商社の営業マンはいつも商材を探しているので、商品が『売れる』と判断すれば各拠点に回してPRしてくれるのです。
外資系であれば、国内だけならず海外の案件すら持ってきてくれることもあるんです。
実質雇う営業が増えたようなものです。むしろ、雇用して営業しない社員を抱えるよりもお得かもしれません。
⑦商社が持っている大手取引先に間接的にPRできる(製造側)
大きな商社・地元密着の商社があり規模は違いますが商社というものは固定の客先をもっています。たとえば、大学などに入っていたり大手企業に入っている商社でしたら、わざわざ難易度の高い新規営業をせずとも自社製品をPRするチャンスがあるんです。
商社の担当営業と同行させてもらうことができれば、労せずして大口の客を得ることができるのかもしれません。
商社が入ることのデメリットは?
転売ヤーは店の商品を買い占めたりして、他人の『標準価格で購入する権利』を害しますが商社は転売は転売でもまっとうでいて、メリットのある商売でメリット面が大きいということはご理解いただけましたでしょうか?
ですが、デメリットもあるんです。といっても、二律背反といいますかメリットがそのままデメリットにもなりえることがあるんです。
①マージンを取られる(消費者側)
当然、手間賃を取られるのは確かですし物によってはAmazonやモノタロウといった通販の方が安くて速い場合もあります。
ただ転売するだけで金を取るのは納得できない!という人は一定数いますが、人が動いて商売をしている以上はマージンを取られるのは普通ですよね。
それをデメリットと感じられるのでしたら、商社は使わない方がいいでしょう。
②専門知識がない(消費者側)
さすがに、製造者ではないのである程度勉強しているとはいえ、商社は専門者ではないので専門知識はありません。
自信満々にPRされたあげく、トラブルが起こったらメーカーに聞いてくれと言われたら最悪ですよね。その仲介をしてくれる人もいますが、すぐにメーカーに投げる人もいます。担当者の当たりはずれが激しい業種です。
③見積もりが遅い(消費者側)
基本的に商社の担当は常に外に出ていて、なかなか帰ってきません。場合によっては後回しにされたり忘れられたりすることもあります。
擁護すると商社の営業もノルマ達成の為に忙しいので処理が追い付かないということが多いのです。ですので、なかなか見積もりが返ってこないことはよくあることです。
④客の顔が見えない(製造側)
色々とPRして売ってくれるのはいいのですが、製造側としてはフィードバックをしてもらいよりよい製品を作りたがるものです。
ですが、商社販売ですとユーザー毎の感想という物がクレームでもおこらないかぎり、なかなか上がってきません。
製品を進化させるのはユーザーの実直な意見なのでそれがなかなか貰えないというのはデメリットです。
⑤担当者の対応が酷い(製造側)
商社側の担当者もたまに信じられないくらい酷い人間がいます。駄目だと言っても見積依頼をそのまま転送したり、ぺらぺら簡単に必要ない情報を話してしまったり、当たり前のように嘘ついたり納期遅れや約束の時間を守らないといったいわゆる「使えない営業」がいるのです。
そんな人にあたってしまったら残念としかいうしかありません。商社側も大勢の営業がいるので売れているいい営業もいれば、やりかたも悪くまったく売れない営業もいるんです。
ただ売れないだけならいいですが、自社製品も一緒に評価が落ちる可能性があり、なかなかコントロールできません。
商社の種類
そんなメリット・デメリットのある商社ですが、はたしてどんな種類の商社があるのでしょうか?
大別すると、『総合商社』と『専門商社』があります。
【総合商社とは】
基本的に何でも商品を扱うのが総合商社となります。お店でいえば、大手デパートのようなものですね。1階から最上階までないものはない、というくらいに多くの商品を扱い、提供しています。
ただし、浅く広くですので営業マンはさほど知識に深いわけではありませんのでご注意ください。
なお、代表的な総合商社は下記となります。
- 三菱商事
- 伊藤忠商事
- 住友商事
- 三井物産
- 丸紅
- 豊田通商
- 双日
ある程度、どこかで聞き覚えがある名前だと思います。CMや広告などで見かけたことがある人もいるでしょう。
もし、知らないというのでしたら社会人として一度調べておいた方がいいかもしれませんね。
あくまでここが代表ではあるのですが、大なり小なり日本には多くの総合商社が存在します。地元密着の卸業者でも横繋がりのコネがあり何でも仕入れて販売することができるのでしたら、総合商社といってもいいでしょう。
【専門商社】
何でも扱う総合商社がある一方で、専門商社というものが存在します。専門とする分野に特化しているので、営業マンにそれなりに知識があります。
実店舗を持っていたり、自社で製品製造を行って販売するメーカー的な商社も存在します。専門性のある商材を商社を通して販売したい・買いたい場合は、こちらにお願いするのが一般的です。
ちなみに専門業種としては、
- 鉄鋼
- 非金属
- 機械
- 電機・電材
- 繊維
- 紙・パルプ
- 日用品
- 化学製品
- 医薬品
- 食品
- 燃料・エネルギー
- 情報・通信
- 建築・住宅資材
- 玩具系
- 輸入商品
などなど、海外から仕入れて国内販売・あるいは輸出するなどする大きな企業から、こちらも一つの市や県単位で商売を行う専門商社がいます。
〇〇代理店などの看板が立っているとそこの商材をメインで扱っている会社になります。ただ、代理店とはいえ実情はなんでも売らないと稼げないのでその限りではありません。
以前、当ブログで記事として書いたような『リレー』でしたら電機・電材系の商社が得意な分野として扱っているでしょう。
転職して電機を扱う会社に入った。何とか入れたのが電機関連の会社だった。でも電機知識がないのにどうすればいいの?説明をされても、その説明に説明が必要という社会人あるあるです。特に電機知識っていままで興味なかった人や畑違いの会社からやっ[…]
商社への就職を目指す一般知識
商社ってなんだか華やかだから就職したい!そんな人もいるかもしれません。ですが、夢を見ていると現実はかなり絶望しますので少しだけこの商社の世界を見てみましょう。
【勤務時間】
職種・会社の規模によりますが、商社は多くが『ブラック企業』です。特に営業は朝8時に出社してすぐに営業に出て、帰りは19時。それから当たり前のように会議が始まったりします。
ですので、翌日の営業の準備をしてから帰るので22時や23時の退社が当たり前の生活になります。
大きな商社は人数もいるし、体力もあるので意外と労働基準法を守って残業代をしっかり出してくれるところは多いですが、小さくなればなるほど『みなし残業』という制度になってブラック化します。
みなし残業とは、一定時間までの残業時間を先払いしてその残業時間を満たさなくても払われるものですが、この制度を悪用していくらでも残業をさせようとする会社が多いです。特に同族経営の会社は給料が安く、さらに何十時間も残業させるみなし残業という傾向が顕著ですので気を付けたいですね。
【給料】
華やかなイメージがある商社ですが、給料は会社によるとしかいえません。大手の商社ですと平均年収6~8百万円くらいが当たり前です。個人売上により1千万を超える人もいらっしゃいます。
ただし、会社の規模によってやはりその給料形態は変わってくるもので地元密着型の商社や小さな同族経営など、月収20万にも満たない金額で毎日何時間も残業をさせる会社もあります。当然、昇給もほとんどありません。
正直、大手商社に入れず先々の目標もなく小さな商社に入るくらいでしたら別の業種を考えた方がいいかと思います。精神病みます。
【ノルマなど】
商社の営業はとにかく足で稼がなければいけません。そしてそのノルマはかなり厳しく、達成すればするほど給料は上がっていきますがドンドン乗せられていき、ダメなら今まで達成していたとしても怒られるという世界です。
しかも、現在はGPSが社有車に埋め込まれていたり、社員証に入れられていてログを取られていたりします。少しの休憩でも許されない風潮があります。
総合的にいえることですが、給料が高い分商社は身体と寿命を酷使する業種です。事前に覚悟を決めていなければ辛い世界です。
まとめ
商社についてまとめさせていただきました。
商社のメリットとデメリットはありますが、迷惑な個人転売ヤーなんかと違い、ちゃんとした利用の仕方をすれば消費者側・製造側にとってうまい架け橋になってくれます。
ただし、商社の中の人はかなり過酷な仕事といえますので、ブラック企業体制のない人は就職の選択からは避けるべきかもしれませんね。
本ブログが知識の手助けになるのでしたら幸いです。