夏が過ぎ、秋になると気温もグッと下がり始めて冬になる準備が始まります。
そのときに大量にでるのが、木々の葉(落ち葉)や虫の死がいです。
街中であれば、清掃業者や周囲の人間がゴミとして捨ててしまい、焼却炉に入って灰になるだけでしょうが、森や山といった自然界では掃除をしてくれる人なんていません。
むしろ、動物の死がいや糞などが野ざらしにされたまま……と思いきや、いつのまにか最初からなかったかのように消えています。
『土に還った』といわれますが、そのプロセスははたしてどういうものでしょうか?
今回は、そんな『分解者』による土に還る働きについて解説をしていこうと思います。
本記事が参考になれば幸いです。
分解者とは?土に還る仕組み
ここ100年にも満たない時間で都会はコンクリートばかりになり、本来の自然のサイクルが失われつつあります。
もちろん、世界的に見ればここまで路面がコンクリートに覆われた国は珍しいのかもしれません。
とはいえ、『土』を踏んだことがないという人はまずいないでしょう。
この土ですが、本来は自然のサイクルとして必ずなくてはならないもので、本来は虫や小動物の死がいや糞、落ち葉などが時間をかけて分解されて土に還ることが自然の生態系の一部なのですが、コンクリートジャングルではそれができにくい為に不自然な環境となります。
と、そんな自然環境の破壊に関しては別の話として、この土に還すサイクルに分解者というのが大きく関わってきます。
さて、この分解者が何かというと生物の死がいや排出物などといった有機物を分解して無機物にして、自然を浄化するはたらきをもつ菌類や細菌類。そして、そのはたらきを助ける土の中の小動物のことを指しています。
通常自然界は、無機養分を土から吸収して植物が育ち、その植物を動物や虫が食べ、その動物や虫の糞尿や死がい、植物の落ち葉などが分解者が土に還してまた植物が無機養分として吸収して……というサイクルになります。
構図としては、この画像のような感じで認識していただければ問題ないかと思います。
このサイクルで重要なものとして必要なのは、太陽です。太陽の光が生物の生活活動のエネルギーとなり、植物の光合成を促して成長させ、もちろん動物や昆虫達の生体活動にも影響します。
そして、有機物を無機物に変換する分解者は土の中の小動物や菌類・細菌類などの微生物によってなされ、このサイクルを自然界が維持できるのもひとえに彼らの働きあってのことと言えるでしょう。
・分解者のはたらき
さて、分解者として土の中にいる小動物や、菌類・細菌類といったものたちが食べる、あるいは吸収されるとどうなるのでしょうか?
通常、二酸化炭素や水、窒素化合物などの無機物に加工されます。
これの何がいいのかというと、二酸化炭素は植物の光合成を促し、窒素化合物は植物の生育に必要な養分となります。
二酸化炭素は大気と混ざり、窒素化合物は土と混ざることでまた水と共に植物に吸収され、栄養となって育ってまた生物に食べられて……という繰り返しが自然界でおこっています。
さて、もしこの分解者である小動物や菌類・細菌類がいなかったらどうなってしまうか想像すると簡単ですよね。
動物の死がいや糞尿はそのまま残ったままで、当然ながら分解されて土に還らないので土に栄養がなくなり植物も育たなくなる。そして、それを食べていた動物も生きられなくなるというわけです。
後にご紹介をしますが、比較的人間に嫌われているナメクジやミミズ、ダニといった彼らもこの分解者としての役割を担っており、地球という生態系を維持している大事な仲間ですので、一概に嫌うのはちょっとかわいそうな気がしますね。
落ち葉の分解はどうやってされるの?
さて、毎年秋から冬にかけて木々は紅葉してその葉を落としていきます。
木々の生え渡る林や森はさぞ落ち葉だらけになることでしょう。秋に登山をしたりすると、登山道が落ち葉で埋もれているということもあるかと思います。
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この落ち葉、普段は無関心で気が付くとなくなっているものですが、落ちた当初は乾燥している有機物の多い硬いものです。
秋口によく見かける落ち葉はこの状態のものがほとんどでしょう。
これを、落ち葉の下や土の中に住んでいるような小動物が好んで食べ、分解されてしだいに細かくなっていき、先の分解者の説明のように二酸化炭素・水・窒素化合物などとして排出されることで黒い土として変化して、また木々などの植物の養分になるのです。
あるいは土の上に落ちた葉は、地面から水分を吸収することでしだいに形をくずしていき、黒く柔らかい葉に変化させながら最終的には微生物などに食べられてやはり土に還っていきます。
いずれにしても、都会の落ち葉は大抵が袋に詰められて焼却されてしまうことが多いですが、自然の中では小動物や微生物などの食べ物として分解され、土となるのです。
こう考えると『土』はすべて小さな生物達の糞で形成されているといっても過言ではないのかもしれませんね。
土の中にいる小動物達
ここまでは、土に還るという分解のはたらきを解説してきましたが、分解者が食べた排泄物がまた土となり、植物が栄養として吸収するというサイクルはぼんやりとわかったかと思いますが、はたしてこの分解者はどのような生物達なのでしょうか?
人間のサイズ感からすると、あまり普段は気にならないかもしれませんが、土の中には昆虫類・多足類・クモ類・甲殻類・微生物などさまざまな小さな動物が生息しています。
この多くが、落ち葉や小動物の糞や死がいに含まれる有機物を食べて生活をしているのです。
たとえば、ミミズやコガネムシの幼虫などは小動物の糞や落ち葉などを土ごと食べて細かくします。
このような者たちを分解者と呼び、彼らは気温・地温・降水量・土の状態によって生息数を変化させるのです。
当然、都会のように土そのものが少ない環境であれば生息数も少なく、この生態系のサイクルは維持できません。一方で、山や森や林といった自然環境であれば多くみられるでしょう。
なお、この分解者となる小動物の例として、下記にまとめてみました。
大きさ | 小動物 |
大型(肉眼で確認できるもの) |
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小型(拡大して観察できるもの) |
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微小(顕微鏡などでないと見えないもの) |
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といった生物達となり、たとえば新しい落ち葉はダンゴムシやワラジムシ、水を含んで黒くなった落ち葉はミミズ、トビムシ、ササラダニなどが好んで食べます。
他にも小動物の糞をセンチコガネやマグソコガネ、ミミズなどが食べたり、オサムシやシデムシは他の動物の死がいなどを食べたりと、いつの間にかこのような分解者たちに食べられて落ち葉や死がいなどは土に還っていくのですね。
なお、小動物だけではなく菌類などもこの分解者に含まれます。
というのも、他の生物や死がいなどに寄生をして有機物のエネルギーを摂取してカビやキノコを生やすというのがこの菌類ですので、これもまた分解といえるでしょう。
分解者たちによる土の変化はどうなるの?
農業など、土を良い物にする為にミミズを使うという話を聴いたことはありませんか?
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ここまで、ミミズなどの小動物は有機物を分解して土に植物を生育させる土を作ることができるということを説明してきましたので、畑作業などでその有用性があるということは想像しやすいかと思います。
彼らにとってはそう意図したわけではなく、ただ生きる為に食べているだけなのですが、結果的に人間の土づくりには非常に有用なものとなっています。
たとえば、土の中の生物は土の中を移動するときに土を動かしたり、穴を掘って落ち葉などを地中に持ち込んだりします。
つまり、土をかき混ぜてくれているわけです。
それと、ミミズやダンゴムシなど土を食べる生物が団子状の糞を排出することにより、土の中に隙間が増えて有機物と無機物が混ぜ合わさります。
こういった彼らのはたらきが、空気や水分を土の中に溜めたり養分の状態をよくした結果、微生物や菌類・細菌類も土の中で活動しやすくなって、さらに分解が進み、植物の生育に適する土壌へと変わっていくのです。
このように、植物が生育できる『土』というのは地上の有機物と地下の無機物が混ざってはじめて完成するものです。
逆にいえば、土の栄養がない状態という表現をする場合、このような自然的なサイクルがされず植物が土の無機養分を摂りきってしまったという状態にあるといえるでしょう。
まとめ
さて、土の分解者とはたらきについてまとめてみました。
当たり前にありすぎて、あまり土がどのように形成されるのかをご存じないという人は多いかと思います。
基本的にはこのように、自然のサイクルにより生物が寿命を迎え、小さな生き物たちがそれを食べて分解し、その糞が堆積して土になると考えて差し支えないのかなと思います。
落ち葉など、いつの間にか消えているとふと思うこともあるかと思いますが、このように有機物を食べる生物達のおかげでずっと残ったままということがないようになっているのですね。
本記事が誰かの参考になれば幸いです。