一本の熱電対の信号を2つに分配したい!できるの?熱電対基礎知識

温度を熱源にあてて計測している熱電対。この信号を記録計や別の計器に入れたいという要望がよく聴こえてきます。

素人考えですと、純粋に今出ている線から二つ取ればいいじゃないか!と思うでしょうが、その考えはちょっと危険ですのでやめましょう。

今回はそんな電機初心者の方に一本の熱電対をどうすれば2つに分配できるのか。それを解説していこうと思います。

本記事が参考になれば幸いです。

 

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ただ2つに分けるだけではダメなの?

冒頭でもお伝えしましたが、現在設置されている熱電対を何らかの事情で記録計や他の計器に入れなければならない!そういったことは使っていると多々あるかと思います。

一つの物を二つに分配して繋げることをよくパラ取りといいます。

おそらくとてもシンプルに考えるとなんだかいけそうな気がしますよね。

そう、このような赤と青線のようにして二つに繋げればいいじゃない、そう思うでしょうが……NGです。基本的にはやるべきではありません

なぜなら、こういったものは計器に繋げればその分だけインピーダンスというものが関わってきます。

インピーダンスの説明をすると話が変わってきますので、ザックリ言えば電流の流れを妨げる働きをするもの。さらに簡単にいうと、電流の流れにくさが生じてくるのです。

ということは、どうなるかというと誤差が発生しやすくなり、表示される温度が意味のないものとなってしまうのです。

「温度が表示されているから問題ないんだよ」

という中には謎の信頼を持っている人もいますが、そりゃあ温度は表示されるでしょう。

そもそも、それで問い合わせてきた理由が「温度のばらつきがあるから」というのだからおかしな話です。

どのくらいの誤差があるのか?

と質問してくる人もいますが、そんなの普通の人間にわかるはずがありません。

しいていえば、数学の権威のある人が要因全てを加味した上で計算でもしない限りは出ない話でしょう。

勿論、そんなくだらないことで計算するのも現実的ではありません。

それに、会社の装置においてそんなリスクを持つわけにもいかないでしょう。

ですので、まともな温度を計測するのであればシングルエレメントのセンサを分配して使おうというのはやめた方がいいということです。

 

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ではどのように分ければいいの?

とはいっても、現在の装置を使って信号を二つに分ける必要性があるわけですので取れる方法がないと困りますよね。

方法としては2種類存在しますので安心していただければと思います。

とはいえ、当然ながらコストはかかってきますのでそこだけは頭に入れていただければと思います。

【ダブルエレメントの熱電対を使う】

もし現在設置されている熱電対を外して交換できるのでしたら、こちらの方がおそらく安く済むのではないかと思います。

同一の熱電対の保護管の中に2本の素子が入っていることをダブルエレメントといいます。

純粋に一本で一つの計器にしか入れられなかったものが、二つ分の線がでて二つの計器に入れられるものです。

 

イメージとしてはこのような感じですね。

ちなみに金額は一本であるシングルエレメントのそうですね、1.5~1.8倍といったくらいでしょうか?

こちらに変更できるのであれば、線が増えるだけですので特に大幅な変更は必要ないかと思います。

ただ、ネックとしては一本の保護管に2本の素子が入ることによる物理的な太さの限界があるということでしょうか。

太い分には問題ありませんが、細い分に関しては、

 


このようにできるメーカーもあれば、できないメーカーもあります。

熱電対ならこのように1.6φくらいの細さでしたら大抵はできるでしょうが、できないと言われたら技術力がないメーカーの場合があります。

となると、品質も疑いがあるので避けた方がいいかもしれませんね。

ちなみに、測温抵抗体は熱電対の2芯線と違って3芯となるのでダブルエレメントとなると6芯となってしまい、あまり細いものはどこのメーカーでも製造は難しいでしょう。

 

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【2出力変換器を使う】

もう一つの方法は、正直コストがかかるかと思いますがセンサを交換できない状況にある時に有効な方法です。

1入力2出力型の熱電対変換器で、電流・電圧の信号にして2つに分けるというものです。

イメージとしてはこのようなものとなります。

ただ、変換器のコストと計器側も熱電対入力の設定から電流か電圧の入力設定に変更しなければならないので手間もかかります。

しいて利点を上げるとすると「センサを変える必要がない」と「電流・電圧信号にすることでノイズに強くなる」ことくらいでしょうか。

とはいえダブルエレメントで対応できないいざという時は、このような手段もあると知識として覚えていた方がいいのは確かです。

 

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まとめ

ということで、熱電対の分配についてまとめてみました。

現在動いている装置に関してはそうそうあるような話ではありませんが、ないわけでもありません。

その「いざ」がいつくるかわかりませんので、覚えておいた方が先々役に立つ知識ではないかと思います。

本記事が参考になれば幸いです。

 

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