中学生になると勉強をすることになるアンペア(A)、ボルト(V)オーム(Ω)という単位ですが、はたして社会人になってどういうものか覚えている人はどれくらいいるでしょうか?
工業高校や工業系の大学の卒業生であればわかるかもしれませんが、畑違いの学校からたまたま電機関係の会社に入社したり、転職してきたりするとこの単位って何となくわかるけどどんなんだっけ?となりませんか?
この単位がどういうものか、計装業界初心者向けに基礎的なところを簡単に解説していきます。
本記事が参考になれば幸いです。
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アンペア(A)という単位とは?
さて、計装関係の電機業界で使われる単位ではmA(ミリアンペア)やA(アンペア)という単位が信号として使われていることが多々あります。
これは一般的に電流と呼ばれるもので、「ある面を単位時間に通過する電気量(電荷)」のことを指しています。
川の流れでいえば、水の量。つまり、このアンペア数が高ければ高いほど電子の流れる量が多いということです。つまり、電気の強さを表しています。
ですので、もし人体で触れるとすると一般的に下記くらいの違いがあります。
- 1mA:ビリッと感じる程度
- 5mA:相当痛い
- 10mA:耐えられないレベルでビリビリくる
- 20mA:筋肉の硬直や呼吸困難、長く触れていると命に影響がある
- 50mA:短時間で生命の危機
- 100mA:致命的な障害を起こすレベル
勿論、この上のA(アンペア)単位になるとこれ以上ですので、興味本位でも触るようなことはしては絶対いけません。
電機計装業界ではこの単位を使い、4-20mAや0-20mAなどアナログ信号という括りで0-100%の信号としています。
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そしてこのA(アンペア)ですが、国際単位系SIの7つある単位の一つで、由来としてはフランスの物理学者マリ・アンペール(1775~1836年)の名前からつけられたものです。
さて、ここからは少し難しい話になるのですが、電気量というものは求めるのが難しいものです。このアンペールさんが発見したのは「電流間の相互作用」というものです。
これがどういうものかというと、導線に電流を流すと磁界がうまれます。また、2本の導線に電流を流すと、導線間に引力や反発が生まれます。
この現象のことを「電流間の相互作用」として、これを利用して値を求めることでA(アンペア)を定義していました。
しかし、それは2019年5月までのことで、実は以降は電気量の数値をしっかりと定めて定義されるようになっています。かなり複雑な定義ではあるのですが、これは科学の進歩によって定義が変わったというべきでしょう。
とはいえ、一般人が知っていても役に立たない知識ですので、学者にでもならない限りは電流は電気の強さ程度に憶えておくくらいでいいでしょう。
ボルト(V)とはどういう単位?
V(ボルト)は計装関係でもそのままのV(ボルト)の単位でよく使われます。
一般的には電圧と呼ばれるものとなります。0-1Vや1-5Vなどでよく使われる、こちらも電流同様にアナログ信号となります。
電圧は電気の流れの強さ。水の流れでいえば、高さです。いくら水が大量にあっても停滞しているのではどうしようもないので、流そうという働きかけが必要になります。
水も高いところから流す場合、当たり前ですが水の量(電流値)が多く、高いところから流す(電圧値)とその勢いと力は強まっていきます。
それをかけあわせて『電力』としてあらわすのが、W(ワット)という単位です。
おそらく中学生のときに、
1W(電力) =1A(電流) × 1V(電圧)
と習ったことがあるのではないかと思います。これは1秒あたりの電力量を求める計算なのですが、電気そのものの力と電気の流れの速さをかけることで求めることができるものです。
計装業界では、このV(電圧値)を0-100%の信号として利用することも多いのです。
ちなみにこの単位の由来は、イタリアの物理学者のアレッサンドロ・ボルタ(1745~1827年)の名前からです。
オーム(Ω)ってどういう単位?
さて、計装業界でよく使われる単位のもう一つがオーム(Ω)という単位です。
中学校理科を覚えているのならパッと出てくるかもしれませんが、オーム(Ω)というのは、「電気抵抗」をあらわす単位です。
簡単にいえば電流の流れにくさのことで、この数字が大きいほどそれだけ電流が流れにくくなるということです。
オームの法則という名を覚えている人は多いかと思いますが、この電気抵抗値は先にお伝えした電流と電圧に深く関係のあるものです。
ちょっと小難しいことを言いますが、導体(電気伝導体)の両端に電圧をかけて電流を流すと、電圧と電流は比例関係にあります。
この関係を利用したのがオームの法則で、V=IRという計算式ができます。
V(電圧)=I(電流) × R(電気抵抗値)
です。まさか計装業界に就くことで中学生理科で習ったことを使うとは思わなかった!という人は多いかと思いますが、この計算式は常識の範囲ですので覚えておかないといざという時に苦労します。
たとえば、4-20mAしか出力できないセンサがあるとして、表示器などの計器側が0-1Vか1-5Vしか受けられないような仕様ならすぐに使えませんよね?
しかし、250Ωの「抵抗」という部品を入れたらどうでしょうか?
- 4mA × 250Ω = 1V
- 20mA × 250Ω = 5V
という計算式が成り立ち、1-5Vで使うことができるんです。こういった臨機応変な対応もできるので、オームの法則については忘れないようにしておいた方がいいでしょう。
なお、このオームという名称の由来ですが、ドイツの物理学者であるゲオルク・オーム(1789~1854年)の名前に由来しています。本来ならO(オー)が正式でしょうが、数字の0(ゼロ)と紛らわしいことからΩ(オメガ)が採用されたそうです。
まとめ
さて、計装業界でよく使われる単位についてまとめてみました。
このあたり、ぼんやりと知っている程度の人がほとんどで、実際にどういうものかを知っているという人は業界に携わっていない人ではあまりいないかと思います。
日常生活では使わないかもしれませんが、身の回りにあるものですので知っておいた方が役に立つこともあるかもしれませんね。
少しでも疑問が解決できたのでしたら幸いです。