昨今、健康ブームやアニメの影響、ダイエット効果があるなどで男女ともに登山に興味・関心がある人が増えています。
しかし、案外登山っていうのは危険なもので、怪我などが起きやすいものです。もっとも多いのが山岳遭難ということで、山中で道に迷ってしまうことです。
本来は、登山経験者やプロと同行して始めるのが一番なのですが、最近ではソロで登山を始めるという人も多い様子。
ここでは、そんな人たちの為に登山中に道に迷った時の対処方法や心得をお話ししていければと思います。
本記事が参考になれば幸いです。
登山中ってそんなに道に迷うもの?
さて、世の中にはなぜか物語の主人公のように「自分だけは大丈夫、なんとかなる」と考えている人が数多くいます。
確かに一般生活を送っているのであれば、多少のトラブルくらいは時間が解決したり周りが解決してくれたり、結果的に何とかなるということは多いでしょう。
しかし、それは事故などにあったことのない人の甘い考えです。
一瞬の突発的な事故が取り返しのつかないことになってしまうのは毎日のニュースを視ていればわかるとおりです。その中には自分は大丈夫と思っていた人も、最大限の注意をはらっていた人もいるでしょうが、起きてしまっては遅いことです。
いつ自分の身に降りかかるのかがわからないのが事故で、登山においてもそれは同じようにいえます。
山岳事故において、遭難を原因とするものはそのうちの4割を占めており、年約3000人近くが山で道迷いにあって自力で戻る道を見つけられずに助けを呼んでいます。
そして、この4割という数字。本当にただ迷っただけの数字となり、何とか運よく登山道に自力で戻れた人、遭難中の転落や滑落をしてしまった人を含めるともっと多くの人数が遭難にあっているといえるでしょう。
街中で迷った!という人は大人になってからはあまりいないでしょうし、電波が通っているのでほとんどの人が持っている携帯電話のGPSを見れば道もわかります。案内図があることも多いでしょう。
しかし、山ではそれがなく手がかりが乏しいのです。最近では電波が通る山も増えてきましたが、そうでもない山もまだ多くあります。
だからこそ、普段の生活で使えていたものが使えなくなり、パニックを起こして余計に奥に進んでしまったりするのです。
こういったことからも、登山中は一歩別の道に進んでしまっただけで迷いやすいといって間違いはないでしょう。
登山中に道が分からなくなってしまったらどうすればいいの?
では実際に、登山中に迷ってしまったらどうすればいいのでしょうか?
すでに見つかるはずの目印もなく、誰ともすれ違わず、ずっと歩いていても誰も道を歩いていないような獣道が続き、現在地も定かではない。
これに気が付いたときはすでに手遅れで、誰がどう見ても完全に山の中で迷って遭難しています。
この場面、まずは立ち止まって冷静に深呼吸して落ち着くことが大事です。
おそらく一人の時はなかなか冷静でいられるのは難しいでしょうが、せっかく真っすぐ来た道をわからないものにしてしまうのでむやみやたらに歩くのはとにかく厳禁です。
何人かのグループできた場合は、集団パニックにならないように。なってしまうと、仲間割れや勝手に行動を始めるなどろくな結果にはなりませんので努めて落ち着き、冷静にどうするか。どうしなければいけないかを考えましょう。
ひとまず、携帯電話などのGPSで現在地を確認するのが手っ取り早いですね。せっかくの文明の利器ですので頼れるときは頼った方がいいです。
ただし、先にお伝えしたように電波が入らないという山もいまだ多いですので、すべての状況で頼りになるかというとそうでもありません。あくまで第一手段として確認をしやすいものという程度です。
ここで電波が入らないからと、入る場所を探して歩き回るとさらに現在地を見失ってしまいますので、GPSが通用しないならすぐに諦めましょう。いざという時の電池の無駄になってしまいます。
じゃあ、どうすればいいのかというと、
- 地図とコンパスで現在地の確認
- 来た道を引き返す
- 下より上を目指す
の三つを試すと迷った状態から登山道に復帰する可能性が高まります。
それでは、ひとつずつ詳しくあげてみましょう。
①地図とコンパスで現在地の確認
登山者であれば、念の為にひとりひとつずつ登山地図(あるいは地形図)と登山用のコンパスを持っていた方がいいでしょう。
GPSがきかないときに現在地の把握や、進むべき方向が間違いないかの確認ができる方法となります。
ちゃんとした使い方には、ちょっと勉強と知識と慣れが必要ですが、登山中は下記記事の中にあるように乏しい目印(尾根や谷など)からおおよその現在地を出すことが可能です。
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それに、登山地図があれば最後に見た目印がどこだったか、そこから間違えてどう進んでしまったのかを予想しやすくなるかと思います。
登山を今後始めるのならば、登山地図は必須。おそらく登山初心者であればよく言われるかと思います。登山計画を立てるのにも便利と、いざ書店やアプリで買ってみるとごちゃごちゃと書いてあってまったく読み方がわからない。そんな人もいるかと思いま[…]
②来た道を引き返す
パニック状態でむやみやたらに歩き回らない方がいいというものの一番の理由はこれです。
おそらく、基本的には真っすぐに歩いてきた道でしょうから、真っすぐに引き返せば知った道に戻れるのは道理ですよね?
ただ、これまで歩いてきた道すらわからないというのであれば、次の方法を試した方がいいかもしれません。
③下より上を目指す
「下っているうちに登山道があるだろう」と思って下るのは間違いです。
むしろ、下りは崖や滝、沢などにぶつかって危険だったり行き詰ってしまいます。
迷ったときは『上』です。
なぜかというと、山の形って山それぞれではありますが、すっごく単純にすると下記のような形ですよね。
そう、三角錐です。下の方が面積が広く、上は先細っています。
つまり、下に行けば行くほど面積の広い『どこか』にたどりついてしまうわけで、逆に上に行けばそれだけ面積がなくなっていくわけです。
ということは、上に行けば行くほど高い位置から見晴らしもきき、どこかの登山道に出る可能性が高くなるということです。
もちろん、上っている最中に危険な崖などがあれば迂回するなりして回避しましょう。
道に迷わない為の心得!これは意識してやろう!
さて、道に迷った際の対処法をお伝えしてきましたが、まったく道が分からない。どうやっても登山道に出ないというのであれば、救助を出すか救助要請をするしかありません。
前日までに登山計画書をかいて提出したり、誰かに行き先を伝えておけば遭難しても手掛かりになったり、いち早く帰ってきていないことに気が付いてくれるでしょう。
初めての登山に、行くべき山を決め、準備をバッチリとしたらあとはさあ、何をすればいいかと思うことでしょう。もう完璧だ!やることがないというのであれば、翌日の為にも早く寝ておくといいでしょうが、何か足りていないと漠然と感じているのであれ[…]
しかし、そもそも山道で迷わない為に遭難を防止する行動を意識的にとっておけば、道迷いになる可能性は減るでしょう。
最後に、遭難防止の心得をお伝えをしたいと思います。くだらないと思うかもしれませんが、やるのとやらないのとでは大違いです。
遭難防止の心得① 常に地図で確認する
常に地図で現在地や歩いてきた道を照らし合わせましょう。
こまめに分岐のたびに確認をしたり、何らかの目印があるたびにコースを外れていないか面倒でもチェックをして、この先の次の目印はどのくらいの距離で何であるかを確認する癖をつけておくと道迷いは減ります。
そうすれば、しばらく歩いて目印がなかったり、細い道になっていったり、予定とは違うものがあったりと少しの違和感でも感じとることができます。
その違和感を感じた場合、下手に進まずに立ち止まってGPSを確認したり一度戻ったりと自分がいまいる場所を確認することを優先すれば大抵は問題なく元のコースに復帰することができるかと思います。
危険なのは、おかしいと感じながらも楽観視して進んでしまうことです。
遭難防止の心得② 分岐の看板を毎度チェックして写真におさめておく
先ほど、遭難をしたら来た道を引き返すということをお伝えしましたが、道に迷う原因のひとつに分岐の看板を見逃してしまうことがあげられます。
おそらく、おしゃべりや顔を落としたまま歩いていたり、登山の疲労で見逃してしまうなどといった原因になるかと思います。
夏は植物の成長が早く、看板が隠れてしまっていたということも考えられますね。
人は勘違いする生き物ですので、読み間違いなどもあります。ですので、分岐の看板があるたびに写真に残しておくと後ほど行動を振り返ることができるので便利です。
登山地図と合わせてチェックを入れておくとかなり間違いの可能性を減らせます。
同時に不安になったら早めに引き返して看板を再チェックすることも大事です。行動記録をとっておくことで、迷ったとしても現在地の予想がつきやすくなります。
遭難防止の心得③ 分岐で知らない登山者にはついていかない
登山中の挨拶は大事なことですが、分岐で「あの登山者が進んでいるからたぶんこっちだろう」というのは非常に危険です。
その登山者は上級者かもしれませんし、その登山者自体が間違った方向に進んでいる可能性だってあります。
前者の場合、知らない上級ルートに進んでしまい、ついていった人に引き離されて道がわからなくなってしまうことや自分の技量以上のコースになってしまうことも考えられますし、後者の場合はそもそも二重遭難になってしまいかねません。
あくまで、自分で地図や分岐をチェックして正しいコースを選択しなければなりません。
自分、あるいは自分達で計画した登山ルートや行程なので、他人についていくという曖昧な判断は厳禁です。
まとめ
さて、登山中の遭難に合わない為の心得ということでまとめさせていただきました。
年間結構な人が山岳事故にあっています。なりたくてなったわけではないでしょうが、事前の準備や対処法はちゃんと把握しておかないと他人事ではなく自身が山の中で迷ってしまうことになります。
街中とは違うのですから、注意力が登山には必要ではないかと思います。