長年勤めた会社を退職し、転職の道を選ぶ人が多い中、自分のやりたい仕事をしようと独立の道を選ぶ人がすくなからずいます。
さて、最初に迷うのは個人事業主としてやるのか、会社として最初から設立するかのどちらかではないでしょうか?
今回は、個人事業主と会社設立。どちらのスタートがいいのかメリットとデメリットをまとめたいと思います。
本記事が参考になれば幸いです。
個人事業と会社設立のどちらがいいのか特徴を確認!
独立して起業ををするにあたって、個人事業主としてスタートをするのか、それとも最初から会社を設立してしまうのか。
悩む人は多いのかなと思います。ぼんやりとしたイメージとしては、
「個人事業主よりも会社として成り立っていた方が社会的信用度が高い」
だから、最初から会社設立の方がいいだろう。
そうイメージから安易に考えて最初から会社設立をしてしまうような人がいます。しかしこれ、本当に正しいのでしょうか?
結論として、下記に単純に個人事業主と株式会社設立における違いの部分をまとめてみましたので、こちらをご参照いただければと思います。
個人事業主 | 株式会社 | |
事業の立ち上げ | 届出のみを提出 | 登記をするのに商法をはじめとする専門的な知識や手続きが必要 |
設立にあたっての費用 | なし | 約24万円 ※司法書士を雇う場合は別途費用発生 |
資本金 | なし | 資本金0円でも可能 ※最低資本金制度が廃止したことにより。ただし、資本金がそのまま会社の信用に繋がることもある。 |
事業・業種内容 | 自由 | 定款に定めたもの以外は基本的にできない |
記帳・決算時の報告 | 単式簿記※個人でできる単純なもの (青色申告者は複式簿記) | 複式簿記 ※専門知識が必要 |
社会的信用 | 個人としてみられ、低く見られることもある | 大規模にみられ、高くみられることがある |
債務に対しての責任 | 個人が無限の責任を負う | 出資の範囲内 ※ただし、借り入れは個人の無限責任 |
社会保険 | 対象外 | 強制加入 (代表取締役一人でも会社であれば加入。手続きが煩雑) |
簡単にではありますが、比較特徴をこのようにまとめてみました。
はっきりいって、
「会社にするのはなかなか面倒くさい!」
と感じた人はいるかと思います。
確かに、いずれ会社にするという目標をもっていて、どうせ後でも先でも同じだろと考えて設立してしまう……というのも、ひとつの個人の考え方ですが、そこまで最初からスタートダッシュをする必要があるのでしょうか?
もし仮に、すでに自身の人脈から取引先がすでに決定しておりそこから、会社として設立されたのなら取引するよと言われているのであればこちらの方がいいかもしれません。
ですがそうでない場合、資金というものは商売においてもっとも重要なものです。
法的・経理的な専門知識をもたず開業に司法書士や税理士などを雇うのであれば当然、お金もかかってくるでしょう。
なかなか10年、20年と継続できる会社というのはいないもので、大いに失敗もありえるわけです。
たとえば、趣味を仕事にした「趣味と実益」をかねた商売であっても、それで会社として設立して食べていけるのはそう多くはありません。
自分の趣味を持っているということはいいことで、普段の忙しい日常生活の中でホッと一息がつく時間ではないでしょうか。熱中してしまうと、いつの間にか何時間も経ってしまっているようなそんな趣味にドップリとはまってしまっている人も少なくはない[…]
いずれにしても、資金繰りが難しくなって廃業……となる可能性というリスクは考慮しなければなりません。
ですので、最初からお金を使ってしまうのは極力避けたいところでもありますよね。
もちろん、最初から会社設立はよくないよという話ではなく、そういうリスクが大きいということを考えていただければと思います。
お金をかけて会社を設立して信用をとるか、はたまた個人事業主としてまずはうまくやりくりができるのか試してみるか。
自身のこれから進む道のどちらにメリットがあり、デメリットがあるのかをよく考えてから選択した方が間違いなく後悔はしないで済むでしょう。
個人事業主と会社設立のメリットとデメリットを解説
では、ここからは個人事業主と会社設立のメリットとデメリットの部分を少し詳しく解説していこうと思います。
どちらを選択するかは、その人による考え方や、資本力によって違ってきますので安易に考えずによく考えて選択をしましょう。
①開業手続き
開業の手続きは圧倒的に個人事業主の方が簡単で短時間で手間もなくおこなうことができます。
というのも、開業に必要なのは納税地の所轄税務署に『開廃業等届出書』というものを提出するだけというシンプルなもの。これは個人事業で開業するには大きなメリットです。
一方で、会社の設立をおこなう場合は登記の方法や商法など、複雑な決め事があり司法書士にお願いをするなどするとそれなりにお金がかかります。
一般的にこの総費用は30万円前後を想定するといいでしょう。
他、最低資本制度は廃止でなくなりましたが、それでもある程度の資本がないと個人事業と同様の扱いを受けてしまいます。
ですので、これをデメリットと考えるような資金力がない場合は個人事業としてスタートした方がメリットは多いというわけですね。
②運営方法
まず、会社の事業内容についてですが個人は自由に変更して働けるのに対して、会社となると定款として事業内容を国に提出したものしか商売として扱ってはいけません。変更するにしても、ちゃんとした法手続きを経ていないとならないので自由な運営はできません。
そして収支の帳簿ですが、個人事業主であれば単純なお小遣い帳のような『単式簿記』と呼ばれるものに記帳していれば個人でも処理が可能です。
最近では、経理ソフトを導入することで本当に簡単な税務計算もおこなうことができますので、これから個人で独立しようという人は間違いなく導入していた方がラクでしょう。後から計算するのはかなり大変です。
ちなみに、管理人が使用しているオススメは下記の『弥生』です。名も通ってますし、結構簡単に計算してくれるのでかなりラクです。
さて、一方で会社の方はというと『複式簿記』が必要になり、複雑になります。自分でやれないのならば普段の経理をする人や税理士などを雇わなければならないですし、それにはやはり人を雇うお金が毎月発生します。
最初からこれはさすがに厳しいという人もいるかと思いますので、やはり資金力がない場合は個人の方がメリットが強いのではないでしょうか。
③取引について、社会的な信用
個人事業主の場合、一般的な現金による売買行動であれば意外とそう問題になることは多くはありません。元々個人でできる範囲で大きなことを最初からやろうという人は多くはないでしょうし、相手側も商売として考えて現金としての取引なら問題ないと考えるところも少なくはありません。
ですが、少し手を伸ばそうと契約を伴う、たとえば大きな買物をして買掛金となる取引のものや、OEM契約をする個人と会社の取引となりますと、話は変わってきます。
現金では販売できても、契約となると個人を相手にはしないという会社は多く存在します。特に大きな会社であればあるほど、会社間での取引しかしないというところが増え、個人事業では門前払いとなってしまうのが普通です。
これは、社会的信用に通じるところがあり、会社を設立するにあたってのメリットであり、個人事業のデメリットでもあります。
他にも、銀行からの借り入れや従業員を雇いたいときなどは、どうしても会社という体裁でないと厳しいところでしょう。
④責任
事業に対しての責任で個人事業が大きなデメリットになるのは、責任問題になったときに無限責任を負うことです。
つまり、何か失敗して相手に損害を与えた場合はすべての責任を負う必要があり私財をなげうってでも責任を取らなければならないということ。
逆に、会社の場合は出資の範囲内。つまり、会社という組織が『法人』という個人ですので、会社の財産がなくなりはしても経営者個人の範囲には影響は及びません。
なお、銀行からの借り入れについては、そもそもお金がなく借り入れしているわけで事業主である社長本人の私財を担保にして借りていることが多いので、そういった部分については法人の部分を超えるところがでてきます。
結局どっちがいいの?日雇い・短期バイトとの併用がオススメ
さて、ざっくりとそれぞれのメリットとデメリットをまとめてきましたが、はたしてどちらがいいのでしょうか?
結論からいえば、個人事業主からスタートが無難にオススメです。
もちろん、最初から会社間取引が前提となるのであればその限りではありませんが、多くの人は自身の強みや経験を活かして独立をするのではないでしょうか?
もちろん、スタート時に貯金があったとしても案外減っていくのは早い物ですし、お金をかけて会社として設立して大コケしてしまっては元も子もありません。
ですので、迅速にまずは個人事業主として開業してみて、うまくいくかを試してみることを行動の第一歩にした方が堅実です。
というのも、いくら社会的信用を得やすいとはいえ、設立したばかりの会社は個人事業主と同じで社会的信用なんてありません。結局、時間をかけた実績が信用とイコールとなるので、焦って会社にする必要はないのです。
ですので、あくまで個人的にではありますが日雇いや短期バイトとの併用で商売をするのがオススメ致します。
実際、起業したら自分の生活の維持。そして商売として何かを販売するのには仕入れをしなければ何も売ることができません。
販売しているものを回して、生活と同時に商売も維持できればいいのですが、軌道にのるまではなかなかそうはいかないでしょう。
実際、まだ始めていない人は悠長に構えているかもしれませんが、貯金は目減りしていく一方です。
技術を売るという方法もありますが、それは一部のスペシャリストだけですので、そうでもない人は難しいのは明らかです。
しかし、一応日雇いや短期のアルバイトをしてある程度仕事に入ってさえいれば、最低限の生活費はそちらから捻出したり、余剰金額を商売に回したりすることもできるわけです。
たとえば、一日7500円のアルバイトだとしても月に20日働けば15万円の収入になるわけで、これは起業したての人間としてはなかなか大きな金額といっても、差し支えはないでしょう。
おそらく、何もしないよりも心の余裕はかなりできるはずです。
特に個人事業主の場合、このように併用して仕事をして自身の商売がうまくいくのを待つというのが、無難に伸ばしていく方法のひとつかと思います。
オススメの短期バイトができる求人サイト
まとめ
さて、個人事業主と会社設立のメリットとデメリットをまとめさせていただきました。
実際、焦ってとにかくイメージばかりを大事にして最初から会社の設立をするような人がいますが、それは性急過ぎるというものです。
同じ開業するにしても、個人事業主として試しにやってみて軌道に乗るようだったら後からちゃんとした会社として設立をした方が、基盤がしっかりしているので安心かと思います。
もちろん、それは個々人の判断ですが、焦りすぎないことが重要なのです。生活が厳しければ、本当に日雇いなど併用しないともちませんので、オススメです。