登山を始めようと思って、いわれた通り地図を買った。コンパスを買った。
はい、どう使うのか分かりません。となったりはしていないでしょうか?まさにコンパスは使い方がわかれば登山者の強い味方になりますが、使い方がわからなければどうしようもありません。
そんな地図とコンパスをうまく利用すれば、道に迷う可能性も減らすことができ、進むべき方向を見極めることができるんです。
本記事では、そんなコンパスと登山地図を組み合わせて使う方法の基本を初心者にわかりやすく画像付きで解説していきたいと思います。
本記事の内容を応用することができれば、どこに進もうが、どこにいようがある程度は特定できることができるようになるでしょう。
とはいえ、あくまでここのものは基礎的なコンパスの使い方と考え方ですので自身で考え、応用して使い慣れていかないと役に立たないことは心に留めておきましょう。
本記事が参考になれば幸いです。
そもそも、ベースプレートコンパスを使う意味・目的とは?
さて、この画像のものが登山者が地図と合わせてもっておくといいであろうベースプレートコンパスといわれるものです。
このコンパスについては、下記の記事で詳しくしていますのでここでは割愛をさせていただきます。
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そもそも、なぜスマートフォンについている電子コンパスや時計などについているコンパスではなく、このベースプレートコンパスなのでしょうか。
確かに、磁北線を引いた。あるいは引いてある地図を持ってさえいれば、北と南がわかるだけのコンパスでも方向確認くらいは問題なくできるでしょう。
しかし、それだけなんです。
進むべき方向を正確に定めたり、現在地の確認をする為にはこのベースプレートや、描かれている矢印などが必須で、それを見極める為にも、ベースプレートコンパスが必要になってきます。
では、このベースプレートコンパスはどのような目的でできるのでしょうか?
それは、
- 進みたい方向に体を向ける
- 山座固定(目標となる場所を特定する)
- 地図上の尾根や沢の方角から現在地を確認する
ということができることになります。①と②に関しては、自分がいまいる場所がわかっている場合に、迷わないよう、見える目印が何なのか特定するような場合に使う方法です。
③に関しては、念の為に自分のいま立っている場所を確認する場合、自分がいまいる場所を導き出す場合に使われるものです。
ただし、視認できる目標物と地図上の目標物(尾根など特定できるもの)がある場合に限りで、密林や霧などがあって視界が不良となっている状態では現在地を割り出すことはできません。
携帯電話のGPSが使えなくなってしまった場合などにコンパスは迷わない為に有効な手段ではありますが、万能というわけではありませんので、過信はしすぎないで、常に山中ではこまめに自分の位置を確認しながらコースを進みましょう。
地図とコンパスの基礎中の基礎の使い方 整地をしよう!
さて、下記の記事にて磁北線の引き方というものをまとめました。
登山で地図を買った。コンパスを買った。後は何とかなるだろうと思ってコンパスや地図の使い方をわかっていないという人は多いのではないかと思います。確かに、それ単体でも登山用の地図はマッピングとして、コンパスは進むべき方角を指し示すものと[…]
この磁北線がなければ、地図とコンパスから現在地を導き出すことはできませんので、もし磁北線が何かわからないというのであれば、まずはこの磁北線の引き方から勉強する必要があります。
これからコンパスを使って地図から自分の向かう方向の確認、自分のいる場所が確認できる方法を解説していきますが、すべてにおいて磁北線が中心となり、これがどのようなものか理解している人でないとおそらく、完全にはわからないかと思います。
案外複雑に感じる人もいるでしょうから、しっかり一つ一つを覚えていきましょう。
なお、本来は地形図の方がいいのでしょうが初心者用ということで便宜的に登山地図を利用してコンパスをあてていきたいと思います。
ではまずは、磁北線が引かれた地図を使った整地についてを解説していきましょう。
これがコンパスの使い方の基本といっていいですし、別にベースプレートコンパスでなくてもこれくらいはできます。
というのも、
ただこのように、磁針のN極と地図を正面から見て上側を北側にした時の磁北線の線が平行になるようにするだけです。
ここで間違えてはいけないのは、地図の磁北線とコンパスの針を合わせる為に、地図を逆向きにしてしまったり、磁針の向きを間違えることで、反対向きになってしまうことがあります。これを「南北エラー」といいます。気を付けましょう。
この招き猫のシロ君(名古屋城土産)のように、地図の向き・コンパスの磁針の向き・自身(シロ君)の向きを真っすぐに合わせるようにしましょう。
すると、自分が今現在いる場所がわかっている場合、ピッタリと地図の向きに対して現在見ている方角・見える景色もまた合わさります。目の前に目印となるようなものがあると、より地図の向きと頭の中の位置情報イメージが合致するのではないかと思います。
これが「整地」というもので、なんてことのないように見えますが、地図と現在地から見えている風景を一致させる作業です。
これが、コンパスと地図の使い方の基礎中の基礎となります。バカらしいと思わずに磁北線とコンパスの針を合わせて現在の向き、現在立っている場所の確認作業としてしっかりと覚えておきましょう。
コンパスの使い方① 進みたい方向に体の向きを変える
では、具体的なコンパスの使い方の解説に入りたいと思います。
上記画像を見てください。仮に『八島山荘』に泊まりたいと思ってきたのに『ヒュッテみさやま』に間違えてたどりついてしまったとしましょう。
たいていの人は、地の利がまったくないのでいくら地図上に書いてあったとしても、どちらに向かって歩けばいいのか迷ってしまうこともあるかと思います。
まあ、この登山地図上では、説明の為にわかりやすい目印同士を選んでいるので別にコンパスなどなくてもたどりつけるでしょうが、実際はもっと複雑な場面で使うことになるかもしれません。
便宜上『ヒュッテみさやま』から『八島山荘』の方向がわからないという前提で話を進めさせていただきます。
まず、ベースプレートコンパスの左辺を直線で現在地から目的地に合わせます。
このときは、別に整地のときのように体の向きなどはどこを向いていても気にしなくて問題ありません。
次に、回転盤を回して回転盤矢印を磁北線に合わせます。
(矢印の先は、磁北線の北側になります。南側にしないように注意してください)
地図の役目はこれで一旦終わりです。シロ君のようにコンパスを正面に見据えて構えます。
ぐるりと自分の向きを変えて、回転盤矢印と磁針がピッタリ合う位置にもっていきます。
ここでコンパスから顔をあげると、まさに正面が自分が向かうべき方向であるということになるんです。
地図と合わせるとこんな感じになるでしょうか。青線が磁北線。赤線が回転軸矢印でほぼほぼ平行になっています。
現在地は黄色丸で、向かうべき方向は緑矢印。シロ君は正解の方向を向いているかと思います。
このように、基準となる地図上の磁北線の方向をコンパス側の回転盤矢印で一度手動で固定し、実際のコンパスの針をそこに合わせ込むことで、地図上の向かう方向と、自分の体が進むべき方向を合わせ込むことが可能なのです。
ちなみに、多くの場面でこの使い方はできますが、
- 広く平坦な場所
- ヤブや樹林帯
- 雪山・霧の中
といった、見通しが悪い場所でどこに進めばいいかわからない場合に有用です。
コンパスの使い方② 山座固定(目標となる場所を特定する)
さて、次は山座固定という現在見える場所の建造物などが本当に目的のものなのかを確認する方法です。
あくまで自分がいまいる場所がわかっていることが前提ですので、この方法は迷っているときには使えません。
では仮に、現在の位置として筑波山頂にいるとしましょう。
そこからは『男体山御本殿(青)』と『女体山御本殿(黄)』が山頂を中心に対角上に見えます。
しかし、あれれ……これ、どっちがどっちだろう?男体山御本殿に行きたいのに、逆に行っちゃったら戻ってこなければならなくなるぞ。
……という状況だとします。まあ、実際そんなことあったら方向音痴にも程があるでしょうし、案内板もあるでしょうが便宜上わかりやすい目印でご説明をします。
この場合、先ほどと要領は同じく地図とコンパスでどちらが、どちらの建物なのかを判断することができるんです。
まずは、現在地と現在見える目標となる建物に左辺で一直線にするように合わせます。
このとき、回転盤矢印を磁北線に並行になるように合わせます。上記はちょうど磁北線と重なる位置になっていたので、そのまま合わせました。
今回も先ほどと同じで、回転盤矢印と磁針のN極を合わせる位置に体を回転させてもっていきます。
そして顔をあげると、目標となる建物などの方向を向くように立っていますので、今回の場合は、
「あっ、こっちの方向の建物が男体山御本殿か!」
となるわけです。
この方法を使えば、少し遠くに見える山のピークが何なのかとか、あの建物は何なのか、などの確認をおこなうことができます。
ただし、前述したようにこれは現在の位置がわかっていてる場合に、地図上でおそらくあれだろうというアタリを付けたうえで、間違いがないかどうかという確認作業をする方法です。
ちなみに応用として、逆に自分が地図上でどちらの方を向いていて、正面にある山や建物が何なのかを知る為に方向の確認をすることも可能です。
いままでは地図上から、行きたい方向に自分の向きを変える作業でしたが、今度は自分の向きから地図上ではどの方向に向いているのかを確認する方法となります。
まず、知りたい場所や山や建物を正面で視認しながらコンパスの磁針に対して、回転盤矢印を合わせるように回して、そのまま広げた地図上に置きます。
そして、回転盤を動かさずに磁北線と平行になるようにコンパスそのものを動かします。
後は磁北線と回転盤矢印が平行になった状態を維持しつつ、地図上をスライドさせて現在地に左辺を合わせます。
すると、現在地図上で自分がいま向いている方向を指しているので、知りたい山や建物は地図の中のその直線状の場所にあるものであるということがわかります。
このあたり、文書上では複雑なように見えますが、まさに百聞は一見に如かずで一度やってみると結構あっさりと理解できるかと思います。
コンパスと地図を買ったら、練習がてら何度もやってみることをおすすめ致します。
コンパスの使い方③ 地図上の尾根や沢の方角から現在地を確認する
さて、一番困ったこと。そう、山道で迷ったッ!!
となることですよね。遭難という単語が頭をちらつかせてしまうことでしょう。しかしまずは、焦らないことが重要です。
周囲をよく見れば、コンパスと地図を利用して現在地がわかるかもしれません。
仮に、登山道をはぐれてしまい迷ったとします。地図をひらき、現在地(と思われる場所)にアタリをつけます。上記図の赤丸の位置にいるとしましょう。
しかし、本当にここに自分がいるのか確証はもてませんよね。それで構いませんので、まずは目標物をぐるりと見まわして探します。
何かの建物だったり、尾根(頂上)だったりきっと何かがあるはずです。
ここは今回は便宜上この位置から見渡して尾根(一番頂上)となるであろう『筑波山頂』を目標としましょう。
自分のいる立ち位置(であろう場所)から山頂までの左辺を合わせます。
いつも通り、磁北線(青)と回転盤矢印(赤)を平行に合わせます。
平行にしたところで地図からコンパスを離して回転盤矢印と磁針をピタリと合わせます。
このようにシロ君が向いている向きが筑波山頂であれば、おおよその現在地の場所は合っているということになります。
少なくても、この赤線のどこかにいるということが予想されますので、それがわかるだけでも十分な収穫ではないでしょうか。
仮にずれていたとしても、どれくらいのズレがあるのかを計算して、再度自分の位置を予想してこの作業をやりなおせば、おのずと自分のいまいる場所がでてきます。
つまり、山で遭難したとしても目印さえ遠目でも探せれば、自分のいる場所が大体わかるということなんです。
ではもうひとつ、沢の流れを使って自分の現在地を見つける方法を解説しましょう。
現在地と思われる場所が赤丸の場所と想定し、横に沢がある状況です。
本当にこの場所でいまあっているのだろうか?と思った場合や、山中を迷って沢を見つけた場合にいま自分がいる場所を想定して合っているかを確認する方法となります。
まずは上記図のように現在地と沢の向きを結んだ線とコンパスの左辺を合わせます。
それから、磁北線(青)と回転盤矢印(赤)を平行に合わせるのは同じ流れですね。
そして、毎度ながら回転盤矢印の向きと磁針の向きを体の位置を変えて合わせます。
この際、ピッタリ合った状態で顔を上げて沢の方を向いているのであれば、現在いると予想される場所はおおよそ合っているということになります。
このように、地図とコンパスをうまく使うことで道迷いが起きたとしても現在地を導き出すことができ、自力で登山道に戻ることができるかもしれませんので、コンパスと地図は登山では携帯しておいた方がいいアイテムといわれています。
あくまでここでは初心者用の基本的な現在地の割り出し方を解説しただけですが、応用して使い慣れるようになると頼りになる道具となります。
まとめ
さて、登山用のコンパスの使い方についてまとめさせていただきました。
使い方がわからないと、ただ方位がわかるだけのコンパスですが、使い勝手がわかってくると道迷いを防止したり、遭難してしまったときでも登山道に戻ることができるかもしれない使い方ができるものです。
視界不良などの状況ではちょっと使いどころが狭まってしまいますが、そういう場合でも方向を定めるには非常に有用に使えるものですので、登山を続けるつもりがあるのでしたら、コンパスと地図は揃えて使い方を知っておいた方がいいかと思います。